27 7月 2015
TTcafe タカティーの東北染織紀行Ⅱ
日時:6月20日(土) 16:00~18:00
場所:大阪市中央区南本町「サエラ」
講師:大高 亨 氏
タカティーの東北染織紀行、2回目の今回はフィールドを青森、岩手に移して、津軽こぎん、南部菱刺しを中心に南部裂織り、亀甲織り、南部型染めなどのお話です。画像と製品を触りながらの解説は、東北の風土と気質が生んだ手仕事の面白さを語ると同時に、現在よりずっと厳しいかつての東北地方の生活を想起させるものでした。
冬の厳しい環境抜きにはこの手仕事は考えられないと大高さんは話します。
江戸期に端を発した「こぎん」や「菱刺し」は女性たちの嗜みとして伝わった。
農民は麻布などの使用を強制され(木綿の生地の使用は明治になってから)、それでも手に入れた貴重な木綿の糸を、強度を増し保温性をもたせるために、時には妻が夫のために一針ひとはり刺したという。
布目を津軽では奇数、南部では偶数に数え、拾い、糸を刺す。柄を工夫し、競う。
特に基本の菱型文様は地方により形が違うが300種類をこえるとのこと。
今見られるカラフルな刺し糸は、明治になりイギリス人の宣教師によりホームスパンがもたらされて以降のものである。
南部では前掛けにカラフルな柄を競ったという。
生地の素材は、古くは大麻、苧麻、科布、オヒョウなども使い、南部地方ではアイヌの影響も有ったらしい。
着物・袖無し・たっつけ・前掛けなど野良着、普段着に使い、全面に白糸で刺したものはハレ着にも使った。
一度刺したものが傷むとその上にまた重ねて刺す事も有った。
どれもとてつもなくに手間のかかったもので、長い雪に閉ざされた気候や容易には新しい着物が手に入らない生活が浮かび上がる。
さしこ、こぎん、菱刺し以外にも裂き織、亀甲織りや型染めの紹介もありました。苧麻
をもじり織りにした肌着や着物や小物などです。
大高さんが取材に訪れたのは、弘前こぎん研究所、南部菱刺研究会、南部裂き織保存会匠工房、ホームスパンの(株)みちのくあかね会、(株)日本ホームスパン、亀甲織りの しずくいし麻の会、「BORO」の田中忠三郎コレクションなどです。残された魅力的な布や生活道具などは多くの人たちによって大切に保存され、伝承されています。そんな中を大高さんは「貧しい生活が清いとされる精神性に裏付けされ、人の想いの詰まったものばかりです」「まだまだ突込みが足りない」と言いながら精力的に各地域を歩いています。3回目をみんな楽しみにしています。
なお、当ホームページのコラムvol.024.「東北の布の研究、調査から」も合わせてお読みください。
文責:板東正